社長や管理職の人と話していると、

「指示した事をやってもらえない」

という悩みをよく聞く。

 

でもよくよく考えると、

既得権益・年功序列が残っているような昔ながら大企業でもない限り、

部下は上司の言った通りに動かないのが当たり前。

 

もし上司の立場の人が、

「部下は上司の指示通りに動くのが当たり前」

だと認識してしまっているとしたら、

それは軍隊教育の名残を引きずり過ぎかもしれない。

 

というのも、

部下が上司に指示に従ってくれる背景にあったのはきっと、

仕事がなくなると社員が路頭に迷ってしまうほど貧しかったり、

終身雇用が当たり前だった時代だったから。

 

今はパート・アルバイトでも

最低限の衣食住に困らずに過ごしていける時代。

 

そんな今、部下が何も考えずに

上司の言う通り動いてしまうような会社は逆に危険。

 

ブラック企業として敬遠される事になってしまいがち。

 

 

さらに言うと、

部下が上司の指示に従わないという事は、

悪い事ではないはず。

 

なぜならそれは

ある意味自立できているという事だから。

 

それがわがままの場合もあるかもしれないけれど、

「部下が自分で考えて自分の責任で行動している」

という点では素晴らしい事。

 

上司の指示した通りに部下が動くだけでうまくいくような作業は、

人件費の安い海外に流れたり、AI・ロボットに取って代わっていく。

中間管理職はおろか、その仕事・社員も必要なくなっていく。

 

そう思うと、

部下が上司の指示通りに動かないのは、

新しい時代に適応できているとも言える。

 

指示した通りに動かない部下と対話して改善を進めたり、

そんな部下をマネジメントしてうまく結果を出させる事が上司の腕の見せ所。

 

そこに仕事の醍醐味があるはず。

 

 

もし上司が自由な部下に対してイライラしてしまうとしたら、

本人は認めたくないかもしれないけれど、

きっと嫉妬している。

 

その上司が昔、

従いたくもない指示に嫌々従って苦しんできたのに、

「今の部下はそれやらないなんてセコい!」

と思っている可能性が高い。

 

というのも、

もし上司の心が穏やかな状況だったとしたら、

部下がもし自分と違う意見を持っていたとしたら、

「なんでそう思うの?もっと詳しく教えて?」

と興味を持って聞くはずだから。

 

たとえ仕事よりプライベートを優先する部下に

振り回されて苦しんでいたとしても、

会社や仕事のしくみの方に課題があるかもしれないと思って、

前向きに改善する事を考えるはずだから。

 

本来そこにマイナスの感情は芽生えない。

 

それを上司側の考え方・指示が正解で、

部下の意見・行動が間違いだと

一方的に断定して裁こうとするのはフェアではない。

 

 

法令遵守と叫んでいる割に、

労働基準法に従って有休を取ろうとする部下を

非難するのは矛盾している。

 

自立型社員を育成するためにと、

研修にお金・時間をかける割に、

部下が自立して行動しようとすると、

「指示に従え!」と怒るのは矛盾している。

 

かと言って、

上司が指示を仰がれてばかりいると

「もっと自分で考えて行動しろ!」

と叱るのも矛盾している。

 

部下が混乱するのも仕方がないような気がする。

 

 

 

「イライラ≒嫉妬」

それはお金・数字でも同じ。

 

例えば、

ラクして簡単に数字を上げている人がいたとしたら、

「どうやってやっているの?」

と教えを請うて自分もマネすればいいはずなのに

「あの人はセコい!」

と裁こうとしてしまう人は、

きっとそこに嫉妬の概念があるから。

 

それはできない自分とできる他人を比較して悔しがっているから。

自分の過去の努力を踏みにじられたと勘違いしてしまっているから。

 

みんな違うからこそ面白い。

その違いに興味を持って活かせばいい。

その違いを楽しめばいい。

 

イライラして違いの楽しさを味わえていないとしたら、

それはとてももったいない。

 

 

その「イライラ≒嫉妬」の根本的原因はきっと、

上司の認められたい欲求。

 

それを癒す事が、

「指示した事をやってもらえない」

事に対する根本的解決策。

 

特に上司になったばかりの人は、

まわりの人に「認められたい」と思って頑張ってしまいがちだけれども、

認められようとすればするほど、

逆に認められなくなる(と感じてしまう)ようにできているような気がする。

 

頑張りすぎるが故に、

認められる事に執着してしまい、

「自分の指示した事は間違っていないはず!」

「正しい事をなぜやってくれないんだ?」

と寂しがって陥る被害妄想。

 

そうなると、

自分の正しさを認めてもらいたくて、

部下の正しさを否定しようとする。

 

「俺の意見の方が正しい!」

「俺の指示に従え!」

と部下と対話をサボり

部下とのすれ違い疑問を放置したまま

自分の正解を押し付けようとしてしまうほどに、

お互いの心は離れていく。

 

独りよがりになってしまってハマる悪循環。

 

自分が認められるようになるためには、

先に相手を認める事が必要だと理屈でわかっていても、

なかなかできないのが人間らしさ。

 

それを解決するためには、

認められた後のゴールイメージを

一歩先に進める方がスムーズ。

 

 

たいてい認められたいと思う上司が目指しているのは、

「俺のおかげでうまくいった」

というゴールイメージ。

 

部下に結果を出してもらった時

「俺の言った通りやったらうまくいっただろう」

と言える事がそういう上司の喜びである事が多い。

 

しかし、よくよく考えてみると、

部下が結果を出した時、

「俺のおかげだろ!」

と言う上司よりも、

「あなたが頑張ったからだよ!」

言える上司の方がカッコいいはず。

 

それが腑に落ちると、

過剰な認められたい欲求が癒される。

 

「わかってもらえないくらいの方がカッコいい」

「簡単に認められないくらいの方がカッコいい」

となって他人に依存しなくなっていく。

 

そうすると、

自分を認めてもらうために部下を活用する想いが昇華されて、

部下のため・お客様のために心から行動できるようになって、

マネジメントがスムーズにいくようになる。

 

 

 

どんなに恵まれた状況下にいても

「自分のせい」だと認めたくなくて

「誰かのせい」にしたがる人がいる。

 

また逆に「誰のせい」でもない事を、

「自分のせい」にして苦しむ人もいる。

 

それも人間らしくて面白い。

 

多様性を認めて、違いを楽しんで、

仕事や人生に活かしていける

ご機嫌な人が増えたら嬉しいです。