「今の政治は腐っている!」

「今の学校教育はおかしい!」etc、

何かを非難して変えようとする人の姿は、

特に若い人にとってカッコ良く見えるのかもしれない。

 

時代を変えようとするリーダーに対して、

熱狂的なファンもいる。

 

でも、

怒りの感情で従来の何かを非難して変えようとするのは、

より良くするための手段として、

美しくないように思える。

 

 

今ある何かを非難するのはとても簡単。

 

「こんな問題が起こるなんておかしい!」

「こんなに簡単な事もできないなんて!」

などとミスや短所を探してつつけば、

誰だって悪者に仕立て上げる事ができる。

 

非難する人にとってみれば、

間違っている悪者を裁こうとする事で、

ヒーロー気分を味わえるのかもしれない。

 

しかしそれでは、

相手に対する敬意も感謝の気持ちもない。

 

最善を尽くし今の役目を果たしてくれている

相手の心を踏みにじる。

 

もしうまくいったとしても

その先にあるのは、

同じように自分もいつか悪者に仕立て上げられて、

やっつけられてしまう争いの連鎖。

 

足の引っ張り合いのような事が、

いろんな所でずっと続いているように思える。

 

 

本当に何かをより良くしたいのであれば、

今できている事・従来のやり方のプラスの面を認めた上で、

より良いものにアップデートしていくスタイルの方が、

敵を作らずともうまくいかせる事ができるはず。

 

それは、

意見が違う人、

敵に思えていた人まで

味方にする事ができる方法。

 

そのプロセスを省いて、

従来のやり方の長所を認めないまま、

従来のやり方の短所を責めようとすると、

既存勢力から猛反発を受けるため、

よほどの力がなければうまくいかない。

 

力技でうまくいったように思えても、

後にまた別の大きな課題が噴出しがち。

 

 

それは会社・組織でも同じ。

 

例えば、

「若い社員が辞めていく今の会社はおかしい!」

と働いている会社に不満を言う人は、

「今の社長・上司が無能だから若い社員が辞めていく」

と思っているのかもしれない。

 

しかし過去を知っている社長・上司の立場からすれば

「これでもだいぶマシになった」

と思っているかもしれない。

 

もしかしたら別のメリットを追いかけるために、

やむを得ず今のカタチができているかもしれない。

 

今もなんとかするために行動しているかもしれない。

 

その事を配慮しないまま、

「社長・上司はおかしい!」

と非難して裁こうとすると、

「何も知らない社員がイチャモンを付けている」

と思われてしまいがち。

 

真っ向から対立してしまい、

対話さえできなくなってしまう事だってある。

 

 

とはいえ、

怒りのエネルギーで

何かを非難して変える事にもメリットがある。

 

怒りのエネルギーは強いので、

感情的に人を誘導しやすい。

 

うまくいけば対話する時間を省いて、

素早くダイナミックに変化させられる。

 

攻撃的に思える方法ではあるけれど、

これまでの歴史を振り返ると、いつの時代も、

現状に不満を持った若い人達の強いエネルギーで

破壊と創造が繰り返されてきたのは間違いない。

 

 

「コミュニケーションが大事!」

と言うのは簡単だけど、

本当に1人1人とコミュニケーションをとる事は

とても大変で時間がかかる。

 

変化のスピードが早い中で、

1人1人との対話を重視していたら、

変化に対応できないまま取り残されてしまう事だってある。

 

対話は大事かもしれないけれど、

現実は対話で物事が動いている訳でもないような気がする。

 

忙しい人に

「話をしたい」

と伝えたところで、

時間がなくて話さえ聞いてもらえない事も多い。

 

もし時間をもらって、

「変わってほしい」

と伝えたところで相手には相手の事情がある。

 

変わる方法をわかりやすく伝える事ができたって、

相手をその気にさせられなければ、

相手の行動は変わらない。

 

 

「人を変えるにはまず自分から」

と言うけれど、

「相手に取ってほしい行動を自分が取るようにした」

くらいの事で人を変える事はできない。

 

本当に人を変えたいのであれば、

人を変えるほどの

強いエネルギーを発信できる自分になる事。

 

忙しい人でも、腰が重い人でも、

本当に強いエネルギーで動く

キラリと光る人の想いや行動には反応する。

 

 

そう思うと、

人を変えると言うけれど、

人を変えたいと思っているうちはきっと変わらない。

 

人を変えようとしている事さえ忘れるくらいに、

自分が何かに一生懸命になる事。

 

そうなると、執着が外れて、

いつの間にか気にならなくなって、

ふと気がついたら周りの人も変わっているはず。

 

 

政治も、教育も、会社も、家族も、

本当にそれらを変えるには、

自分が楽しくて楽しくて仕方がないと思えるほど

何かにのめり込むところから始まるような気がします。