今売れる本のテーマはお金・健康絡みと聞いた。

しかもすぐに読めるくらいの薄い本ほど売れると。

 

娯楽として楽しむ小説は

太い方が売れる事を考えると、

お金や健康の勉強が楽しいと思って

本を読む人は少ないのかもしれない。

 

 

できるだけ早く・安く・簡単に、

成果を出す事を追求するのは

とても素晴らしい事。

 

しかし何事も、

早く・安く・簡単になればなるほど、

達成感・充実感は味わいにくくなっていく。

 

 

もし、駅の近くで

知らない人の道案内をしたとして、

「あなたのおかげで救われました」

と、ものすごく感謝されたとしても、

当たり前すぎて、その強い想いを受け取れきれなくて、

社交辞令のように感じてしまうに違いない。

 

同じ道案内でも、

お互い山の奥で遭難寸前になっていたケースなら、

いい事をした実感を得られやすい。

 

「あなたは生きているだけで価値がある」

「あなたはあなたのままでいいんだよ」

と言われても、

その価値をなかなか信じられないし、

受け入れられないのもきっと似ている。

 

人は、それなりに苦労しないと、

相手の感謝の気持ち・役に立っている実感を

充分に受け取りにくいようにできているような気がする。

 

 

逆に、多くの人にとって当たり前の事だったとしても、

苦労すればその価値・感動を充分に受け取りやすくなる。

 

痛みと苦しみの中、

生きるために必死に頑張っている人が

「あなたは生きているだけで価値がある」

と言われたら何かが報われた気がしてきっと涙が溢れる。

 

変わろうとしてうまくいかなくて、

何度も何度も失敗して苦しんでいる人が、

「あなたはあなたのままでいいんだよ」

と言われたら救われたような気がしてきっと感動する。

 

早く・安く・簡単になるのもいいけれど、

苦労するからこそ味わえる充実感・達成感もある。

 

 

とはいえ、

苦労も行き過ぎると、

「やってあげる」

「やってあげている」

にいつの間にか変わっていて、

相手に期待し、見返りを求めたくなる。

 

体調が悪い中、

苦しんで頑張って仕事をしているにもかかわらず、

文句を言われるとやる気をなくす。

 

自分の腹を痛めるほどの

多くのお金・時間を使ったプレゼントで、

感謝されないとイライラする。

 

何時間も手間暇かけて作った料理を

「マズい!」

と言われて捨てられるとショックを受ける。

 

相手の厳しい反応に敏感になった時は、

たいてい相手に期待するほど

頑張りすぎているような気がする。

 

でもきっと、それも含めて、

困難を乗り越える喜び。

 

お金の損得と同じように、

きっと感情も、

大きいリスクを取るほど

感情の揺れ動きが大きくなるようにできている。

 

 

そう思うと、

「やりたい事をやるために●●が必要」

というのはわからなくもないけれど、

「もっと●●があれば幸せになれるのに」

「あの人は●●だから幸せでいいなぁ」

というのはなんだかスッキリしない。

 

何かがないという厳しい状況の中で、

何かが手に入るから嬉しいだけ。

 

例えばお金でも、

お小遣いが数百円の中、

缶ジュースさえ高くて飲めない小学生の頃に

感じられていたお金やモノの価値は今では味わえない。

 

「1万円あったらなんでも好きなものが買える!」

と大喜びしていた子供の頃の喜びを今味わおうと思ったら、

いったいいくら必要になるのだろう?

そもそもそれはお金で買えるのだろうか?

 

少なくとも、

全財産3万円の人にとっての1万円と、

全財産1億円の人にとっての1万円は重みが違う。

 

同じ1万円でも、

感情を満たすという意味では

人によって価値が変わる。

 

 

結局お金も、あったらあったで、

たくさんのお金を使うようになるだけ。

 

「もっとお金があれば幸せになれるのに」

と言う人は、お金があってもなくても、

きっと同じ事を言い続けるような気がする。

 

 

何かがなくてもできる事をやっている人だからこそ、

その何かが手に入った時、

さらにステキな事をやり遂げられる。

 

そしてそうやって、

前向きに動くステキな人ならば、

きっとすごい人が放っておかない。

 

自然な形で誰かに引き上げてもらって、

何かを成し遂げるために必要な何かを

手に入れられるようにできているはず。

 

「もっと時間があれば・・・」

「もっと能力があれば・・・」

「もっと規模が大きければ・・・」

と思うのは素晴らしい事。

 

でも、それが手に入っていない今でも、

「できる事を全力でやっているか?」

「そうなるために行動し続けているか?」

がきっと成功の分かれ目になっているのではないだろうか。

 

 

 

結局、充実感・達成感を得ようとするほど、

相手の感謝・役に立っている実感を得ようとすればするほど、

今あるもの・お金・エネルギーを全力で使う事が求められていく。

 

「お金がない」「時間がない」

と言うと悪い言葉のようにとらえられがちだけれど、

お金がない人は、お金を使っている人。

お金がある人は、お金を使っていない人。

 

時間がない人は、時間を使っている人。

時間がある人は、時間を使っていない人。

 

お金・時間に困っている人は、

困るほどにやりたい事があって、

ある意味充実していると言える。

 

どっちが幸せかなんてよくわからない。

 

 

でも、

いろんな事が早く・安く・簡単になったところで、

意外に人間の感情を満たすための本質は

何も変わらないような気がする。

 

夢が簡単に叶えられるようになってしまったら、

普通の夢を叶える事で得られる

達成感・充実感は味わいにくくなっていく。

 

そうなるともっと、

簡単じゃない夢を追いかけたくなる。

 

衣食住が満たされた今、

お金・時間は感情を満たすために使われる。

 

人間の感情を満たすため、

娯楽の1つとして、

結局、時間がかかって、高くて、難しい事を

求められるようになってくる。

 

きっとその1つが仕事。

 

できない事をできるようにする事。

多くの人が苦労している事を、より早く・安く・簡単にする事。

そのためにお金・時間をかけて、困難を乗り越えるチャレンジをする事。

そのために苦労する事。

 

苦労して喜びを得る1つの手段として、

仕事はとても楽しい事なんだと思う。

 

 

「これさえあれば・・・」

と思うものは人それぞれあるかもしれないけれど、

それがあってもなくても、

どっちでも幸せになれるようにできているはず。

 

どうせ幸せになるんだから、

お金儲けも、健康維持も

苦労も含めて存分に楽しんだ方がいい。

 

そう思います。