空気吸う

 

空気を読むためには、

「何を言ったかよりもなぜ言ったかに注目する事」と前回書いたけれど、

その中でもさらに見るべきポイントは、

相手がわざわざ言った余計な言葉。

 

例えば、上司が指示した後の部下の返事。

 

「わかりました。◯日までにやります。」

 

と言えばいいのに、

「やります」ではなく「頑張ります」と言ってくるのは、

「頑張るけれどできないかもしれない」という意思表明。

 

「したいと思います」と、弱い言葉を使うのも同じ。

 

本来その後に続くはずの省略されている言葉は「けど」。

 

「頑張るけど」「したいけど」「思うけど」、

それでもやれないかもしれないと感じた理由を聞いてあげた方がいい。

 

重要な事は、「やる」と本気で決められたかどうか。

 

だから「自分を変えたいんです!」と

嬉しい事を言ってくれる社員にも騙されてはいけない。

 

そういう人は変わろうとしている自分が大好きで、

まわりに認めてもらいたいだけの人が多い。

 

本気の人は「今から変わります!」と言う。

 

 

上司の指示の仕方も大切で、「もっと考えろ!」と言うのは意味がない。

部下に考える力がないからこそ今の結果なので、それは上司の責任放棄。

 

頭を使わせるのではなく、いつまでに、どういう方法で、何をして欲しいのか、

行動ベースで、相手にとってわかりやすい指示をして、やれるように導くのが上司の仕事。

 

「数字を上げろ!」

「お客様に喜んでもらえる対応をしろ!」

「ミスをするな!」

 

のような、結果を求めるだけの雑な指示や、

 

「何度言ったらわかるんだ!」

「もっと頑張れ!」

 

のような根性論の叱咤激励で、やれてしまう社員が揃っているなら、

その会社に上司は必要ない。

 

言われるだけではやれないからこそ、上司のサポートが必要とされている。

 

だから「言ってもやらないんです」と報告してくる上司は、

やらせられない自分の無能さを棚に上げて、部下のせいにしているだけ。

その後に続く部下の悪口を間に受けてはいけない。

 

 

また具体的な指示を受けても前向きに従おうとしない部下は、

その上司もしくはその仕事が嫌いという事。

 

「やりたくないからやらない」だけなのに、

「やり方がわからなかったから」「他の仕事で忙しかったから」などと、

やらなかった後でもっともらしい理由を言ってくる事が多い。

やりたいと思っていたら、そうなる手前で相談してきてくれる。

 

こんな不毛なやりとりのベースにあるものは、

「本気で部下をやれるようにさせたい」と思っていない上司と、

「本気でやれるようになりたい」と思っていない部下との責任のなすりつけ合い。

 

・評価制度に欠陥があるから

・マニュアルがないから

・ろくなメンバーがいないから

・上司がしっかり教えてくれないから

 

愚痴の言い合いのようなやり取りを聞いて、

時間やお金をかけて改善したところで、また次のやれない理由が出てくるだけ。

 

本気でやれるようにさせたいと思っていたら、

部下がやれないのは自分のせいだと感じてもっと親身になるし、

本気でやれるようになりたいと思っていたら、

上司にもっと食らいついて質問して自分から動く。

 

どんな失敗であったとしても、

「自分が悪い」と受け入れてもらった上での改善でなければ、

反省せずにまた責任転嫁するので同じ失敗を繰り返しやすい。

 

 

 

社長の立場からすると、その上司にも部下にも、

「もっとやる気を出せ!」と言いたくなるけれど、

「やる気がない人」に「やる気を出せ」と言うほど意味のない事はない。

 

ないものは出せない。それこそ社長の責任放棄。

 

今の主流は、やる気がなくてもうまく行かせられるしくみを作っている会社。

「仕事が楽しくない」と言う社会人が多いのはそのせい。

 

それでもなんとかしたいなら、

社長の力でやりたくさせるか、諦めて他から引っ張ってくるしかない。

 

まずは社長が見本を見せる事。

 

なんのための仕事か、

辿り着きたいワクワクする理想の未来を

イメージできるように本気で伝えて行動する。

 

仕事を楽しめない環境を作ってしまった社長が、

責任転嫁せず、社長自身の責任として社員に謝る。

 

どうしても会社の方針に従ってもらえない社員には、

辞めてもらって新しい人を採用する。

 

自分1人でどうにもできないなら、

プライドを捨てて助けて欲しいと頼む。

 

どんな理由があったにせよ、

結局会社が理想の状態とかけ離れているのはすべて社長の責任。

 

社長がなんとかするしかない。

 

社長が本気の背中を見せるからこそまわりが触発されて付いてくる。

 

空気を読む事は、

本当ではない話に振り回されず現状を正しく認識するための1つの手段であって、

それ以上に大切なのは、何があってもブレない軸を持つ事。

 

空気を読んだって、何をやったって、

何かを変える際には、必ず反対する人が出てくる。

 

 

試されているのは、それを乗り越えられるほど本気かどうか。

 

 

本気で成し遂げたい理想があるなら、

まわりにどう思われようが、

言うべき事は言う。やるべき事はやる。

 

それでいいのではないでしょうか。