「あなたの会社はいい会社ですか?」

と社長に聞くと、

嘘つき村のような反応になりがち。

 

いい会社ほど謙虚に

「まだまだです」

と答える。

 

ブラックな会社ほど

「ウチの会社はすごいよ〜」

と答えられる傾向があるように思う。

 

 

ブラック企業の社長・管理職ほど、

自社がブラック企業である事を認識していなかったり、

「ウチは労働基準法を守らないからこそ社員が育つんだ」

とブラック企業である事にプライドを持っていて、

改善しようと思っていない。

 

そんなノリで、

「ウチの会社はやりがいのあるいい会社だから!」

と自信満々で毎年新入社員を雇っては

1年以内にほぼ辞めさせていても、

「我が社は問題があればすぐ改善するので、ブラック企業ではありません。」

と答えるのはよくある事。

 

その割に自社のサポート体制や社内環境を

改善しようとする気配もなく、

「最近の若者は根性がないからダメなんだ!」

と辞める人に責任転嫁するのもよくある事。

 

社長・管理職は重たい責任とストレスを抱え、

そうでも思わないと

やっていられないのかもしれない。

 

 

認知的不協和。

 

モーレツに仕事をやってきた自分の過去を否定したくないから、

「厳しい体罰があったからこそ上手になれた」

「血尿が出るくらい仕事をしたからこそ成長できた」

と思い込んでいる人は多い。

 

本当は労働環境を改善しないとヤバいと薄々気が付いていながらも、

もっとワクワク楽しんでうまくいかせられる方法があるとわかっていても、

潜在意識で心理的に受け入れたくなくて改善できない。

 

これがきっとブラック企業を脱却できない理由。

 

 

この心理的ハードルを乗り越えて

改善していくにあたって厄介なのは、

「ブラック企業問題を改善しよう!」

と社内・社外から声を上げたとしても、

本当のブラック企業には

「ウチはブラック企業じゃないから関係ないし・・・」

とスルーされたり、

「家庭を犠牲にして苦しい仕事をするからこそお金が稼げるんだ!」

とまともに受け入れてもらえなくて話が前に進みにくいという事。

 

逆に、

いい会社の社長・いい部署の上司ほど、

自分の事を言われている訳でもないのに、

「こんなにも頑張っている我々の事をブラック扱いして非難するのか!」

と流れ弾を勝手に受けて過剰に反応して、

話がややこしい方向に進んでいく事になりがち。

 

こうなると、

「いや、あなたの事を言ってないから・・・」

と説明・弁解したところで、

「遠回しにウチの事ディスってるんでしょ!」

「あなたは現場をわかっていない!」

と説教を受ける事になる。

 

 

これは、ダイエットの話が

本当に健康的にヤバい人に

ウケないのと似ている。

 

「●●さんってそろそろ痩せないとヤバくない!?」

くらいのちょっとした言葉でも過剰に反応して怒る人は

少なくとも過去に痩せようと努力をしてきた経験のある意識の高い人。

 

痩せようと思っていない人は

「痩せるって大変だねぇ~」

と自分が一番気にすべき話にもかかわらず他人事になる。

 

もしくは、太っている事を受け入れている人は、

「そうだよね。ついに3ケタ突入しちゃったんだ。」

みたいな感じでポジティブに笑顔で返す。

 

一番伝えたい人には伝わらず、

もう既に意識が高くて行動している人から

「人様の食事に、お前なんかが口を出すな!」

となぜか怒られるみたいな事になりがち。

 

 

 

そう思うと、

ブラック企業問題を改善するために

「ブラック企業問題を改善しよう!」

と発信したって現実的にあまりうまくいきにくい。

 

スムーズに問題を改善する事を考えるなら、

その事実を受け入れたくない人に

あえて問題を指摘して、

認知させる必要はない。

 

そのプロセスを入れると、

「その気のない人に理解させる」

という果てしない大変な作業が入ってしまう。

 

伝える側も、

「あなたのために教えてあげているのに!」

「なんでわかってくれないんだ!」

と余計なストレスを抱える事になる。

 

 

それよりもきっと、

現実的でスムーズな改善策は、

「知らないうちにいつの間にか改善していた」

ような環境を、

自分が楽しみながら作ってしまう事。

 

例えばもし、

その気のない旦那にダイエットをさせたいなら、

「もっと運動をしないとダメでしょ!」

と嫌なことを無理にやらせようとしたって、

何かと言い訳を付けてやらなくなるだけ。

 

自分が山登りが好きで好きでたまらないなら、

旦那に対して、

「あの山に連れていって」

とねだっては、思いっきり感謝して喜べば、

いつの間にか少しずつ一緒に山登りをするようになっていく。

 

「油っこい食べ物を控えなさい!」

と好きなものを無理に制限させようとしたって、

「余計なお世話だ!」

と関係が悪くなったり、

奥さんに内緒で隠れて食べられる事になったりするだけ。

 

自分が大好きな

美味しくて健康な食べ物がある店を指定して

「今度●●が食べたいんだけど、あの店に連れていって」

とねだっては、思いっきり感謝して喜べば、

旦那も釣られて食べるようになる。

 

いつの間にかそれでお腹・心が満たされて、

自然に油っこい食べ物の量が減る。

 

 

同じようにブラック企業問題も、

周りの社長達が社員と仲良く楽しく仕事をして、

適正利益をあげて続けている姿を

自然な感じで見せる事が遠回りのようできっと近道。

 

ブラック企業という短所を是正しようとするのではなく、

よりいい人を採用・定着のためにとやっていた事が、

結果としてブラック企業を脱却する事に繋がるだけ。

 

ブラック企業と言われる会社が、いい会社の影響を受けて、

ブラック企業の裏側にある長所を伸ばした結果として、

いつの間にか問題が問題ではなくなっていくだけ。

 

 

ただこの方法に課題があるとしたら、

自分のおかげで会社が変わったという

”してやった感”が味わいにくくなるという事。

 

いつの間にか変わっているので、

「俺のおかげで変わった」

とアピールがしにくくなる。

 

直接的な感謝を受けにくくなる。

 

もしほんの一部のわかってくれる人から、

「あなたのおかげで改善できた」

と感謝されても、

「私はただ、自分が好きな事をやっていただけなんだけど」

という事になりがち。

 

 

テレビでコメンテーターが、

いろんな問題を指摘しては、

「国民の意識を変えなければならない!」

「この問題をもっと多くの人に知らしめなければならない!」

などと言っているような気がするけど、

それはきっとただのポジショントーク。

 

問題解決を第一優先に考えている訳ではなく、

伝える仕事に価値があるという

自分の立場をアピールするために言っているかもしれない。

 

 

今、あるとされている様々な問題。

 

問題を指摘して解決したい人が強く持っていがちな、

過剰な認められたい欲求を手放す事ができれば、

自分のエゴを第一優先にしないようにできれば、

今認識している問題は、

あまりにも自然な形でスムーズに改善されていくような気がします。