前職では、経営コンサルタントとして、

成功している会社のやり方を徹底的に調べて、

同じ事をやらせて稼がせるという事をずっとやってきたけれど、

「気持ち悪くてやり切れない」

「うまくいったとしても楽しくない」

「所詮は二番煎じなので廃れるのも早い」

というのが、そのやり方の問題点。

 

どんなに素晴らしいマニュアルを作ったって、

その通りにやってもらわなければ結果には繋がらない。

 

そして既存の従業員に、

今までとは違う新しい事を

マニュアル通りにやってもらう際の反発は大きい。

 

やり方を盲信して

従業員と敵対してしまうと辛い。

 

「なんでやってくれないんですか!」

と怒ったところで、

やらせ切れない自分の責任。

 

できる先輩ほど人間味があって、

相手の話を聞く事を大切にしていて、

相手の長所を活かしてアップデートしたり、

共感されるように話を持っていったりするのが上手だった記憶がある。

 

 

 

成功する事に対して憧れがある人は、

理想の結果だけに注目しがちだけれども、

理想の結果を手に入れる事と、

それで感情的に満たされる事が一致するとは限らない。

 

少なくとも今は昔に比べて、

情報に簡単にアクセスできるようになって、

何かにチャレンジする前に、

簡単にうまくいくやり方を調べられるようになった。

 

できたら失敗したくない人は、

できるだけ楽をしてうまくいかせたい人は、

成功法則を調べてから動こうとするようになった。

 

先人の失敗や知恵を活かすこのやり方は、

とても合理的で正しいようにも見える。

 

でも「やりたい」という気持ちが

強く深く醸成される前に、

結果ややり方にこだわって物事を進める事で、

心が満たされない人も増えているはず。

 

 

「●●したい」

「●●になりたい」

という話を聞くと、

その結果に辿り着かせさえすればいいと受け取りがちだけれど、

感情を味わう事を考えると、

結果以上にそのプロセスがとても大切。

 

プロスポーツ選手になりたいと言う人に対して、

「サッカーを辞めて相撲に転向すれば、お前でも簡単にプロスポーツ選手になれる」

とアドバイスしたとしても受け入れられる事は少ない。

 

もしそのアドバイス通りに力士になったとしても、

思っていたプロスポーツ選手とは違っていて、

心は満たされないはず。

 

父親と二人三脚で成功したいと思っていた人が、

「プロコーチを雇えば成功できる」

とアドバイスを受けて

親元から離れてうまくいったとしても、

それでは心は満たされないかもしれない。

 

成功するために大切な何かを犠牲にした人が、

罪悪感が消えなくて、

人知れず苦しんでいるケースもある。

 

心を無視して

結果ややり方を重視すると、

周りからはうまくいっているように見えたとしても、

本人の心が満たされずに

空虚な気持ちがなかなか消えない。

 

成功法則に基づく合理的なやり方を

我慢してやり切って、

もしうまくいったように見えたとしても、

周りの評価と自分の認識とのギャップで、

誰にも相談できない悩みを抱えてしまいがち。

 

 

 

「自分のやりたい事がわからない」

と悩む若者が増えたと言われるのも、

もしかすると、

小さな成功がしやすくなって、

わかりやすく失敗しにくくなった事が原因かもしれない。

 

というのも、

あまり調べずにやりたい事をやると

早い段階で失敗して、

向き不向きが簡単にわかって

トライ&エラーがしやすくなる。

 

昔はそこら中にいた

やりたい事をバカにする人達も、

理解のない頭の固い人達も

本当にやりたい事を見つけ出しやすくするための

儀式を行ってくれるようなもの。

 

やりたい事をやろうとする際に味わう数々の理不尽は

うまくいかなくても、

バカにされても、

カッコ悪くても、

メリットがなくても、

それでも本当にやりたい事なのかを

自分に問いただしてくれるステキな機会。

 

今はいい意味でも悪い意味でも

みんなが優しくなって、

教え方が上手になって、

本来は挫折するはずの事でも、

簡単に乗り越えられるようになったからこそ、

成功法則に溺れて戸惑う現代人が増えたようにも思える。

 

 

成功するには成功するまで続ければいい

と言われるけれど、

結局、そこで問われるのは本当に好きかどうか?

 

「結果が出ない事はやりたくない」

「苦労する事はやりたくない。」

「メリットがない事はやりたくない」

なんて気持ちはきっと誰にでもあるけれど、

それでも好きだからという理由だけで

続けたくなってしまうのが本当に好きな事。

 

成功法則通りに進めてそれなりに結果を出していく中で

心を醸成していくやり方もあるけれど、

結局それではなかなか本当に好きな事は見つけにくい。

 

それがうまくいく方法に隠されたデメリット。

 

 

とはいえ、

賢い人はそんな事はよくわかっているので、

うまくいくやり方を伝える成功法則を謳う本は、

たいてい心に関する事の方が多く記載されている。

 

でも、どうしても

やり方の方がわかりやすくてインパクトがあるので、

そこだけ切り取られて、大きく取り上げられがち。

 

自分の中でもわかりやすいやり方に着目して

よくわからない心の事は

読み飛ばしてしまいがち。

 

そこに惑わされると、

「あれ、なんか違う!?」

と違和感に気付く。

 

 

 

もしかすると、

世の中に溢れている成功法則の多くは、

心を無視して結果を出してうまくいったと思っている人達が、

「自分のやり方は正しかったはずだ!」

「自分のこの結果は素晴らしいはずだ!」

という自分の承認欲求を満たすために

発信されたものなのかもしれない。

 

ポジティブが素晴らしくて、

ネガティブは良くないという認識も、

ポジティブな人によるマウンティングの結果かもしれない。

 

認められる事が嬉しい事で、

認められない事は寂しい事というのも

ただの勘違いかもしれない。

 

 

わかりやすく悩んでいる人と、

よくわからないまま何かに追われている人。

 

成功しているように見えるけど苦しんでいる人と、

成功していないように見えるけど楽しんでいる人。

 

苦しむ事を楽しめる人と、

楽しい事に苦しむ人。

 

あれこれ考えて悩む人と、

何も考えないで動ける人。

 

いろんな人がいて、

何が正しいという訳でもなく、

何が好きかも人それぞれ。

 

でもきっと、

どんな道を選んだとしても、

それがどんな結果だったとしても、

後で振り返ってみると

それはそれで神のお導きとしか思えないような

ステキな経験になっているもの。

 

最終的にはきっと、

自分が好きだったら

そんな事はどうでもいいってところに辿り着く。

 

 

わかりやすい結果や数字に惑わされすぎず、

一瞬一瞬を大切に、

心豊かに人生を楽しんでいきたいです。