お店でサービスを受ける時、
「お客様」としては認識してもらえても、
「私」として認識してくれるような店はかなり少ない。
チェーン店に毎週通い続けたところで、
顔や名前を覚えられる事もなく、一見客と同じ扱い。
ほとんどのお店のスタッフにとって、
仕事とはサービスを提供する事。
本来、最も大切であるはずの目的、
「サービスを使って、どう喜んでもらうか?」
にそれほど興味を持たれていない。
「ありがとうございます」と言ってはくれるけれど、
本当の意味で「ありがたい」とは思っていないのがわかる。
異業種交流会などをキッカケに営業を受けたりしても同じ。
聞かされるのはマニュアル的な、
メリット中心の一方的な説明。
名刺を見てパッとわかる事は把握されていても、
私の起業した背景や今後の理想までは聞かれない。
目の前にいるのが私ではなかったとしても、
同じ話をしているのがわかる。
営業マンにとって興味があるのは、
多くの契約を取る事。
だから1人1人の状況に合わせて対応せず、
質より量で1件でも多くアポを取って、
1件でも多く同じ話をしたがる。
そのサービスを使って相手が喜ぶかどうかには、
それほど興味を持たれていない。
わかってしまうと、
一人の人として扱われていないようでなんだか寂しい。
私の友人に「喫茶チェーン店には行かない!」という人がいる。
理由は、家族経営でやっているような店に行った方が、
コーヒー一杯でも喜んでもらえるからだそうだ。
すごいと思うけれど、そんな人は少数派。
多くの人が、接客なんて最低限でいいと思っている。
値段が一緒なら接客の良い店を選ぶという程度で、
近さ・安さ・商品自体の価値の方が重視される。
だからこそ、会社としては、
必要だとはわかってはいても、
店の接客にそこまで力を入れられない。
ビジネスのしくみは、
残酷なほどにうまくできている。
社会を変えようと思ったら、
社会全体の意識を変えるという、
たいそうな事が必要になる。
しかし、そんなたいそうな事を乗り越えて、
最近、会社で社員への対応が優しくなってきた。
人材が売り手市場になり、
社員の定着が大きな経営課題になってきた事が理由だ。
社員を一人の人として扱わず、
ダメなら新しい人を雇えば良いと駒扱いするような会社は、
人材で困り経営に苦しむ。
酷い会社はブラック企業扱いされるため、
必然的に対応を変えざるを得なくなった。
社会のニーズによって、会社は変わる。
その動きはわかりやすい。
ニーズのないところに理想を唱えたところで、
事業は成り立たせられず広がらない。
どれだけいい事だったとしても、
そこに社会のニーズが付いて来れていなければ、
失敗して痛手となってしまう。
だから、やりたい事をやるならまずは小さく。
小さな規模からならニッチなニーズに対応する店として成り立ちやすい。
それが本当に社会に求められているものならば、
社会の波に乗るように、
新しいニーズの後押しを受けて拡大していく。
その成功事例が社会に一石を投じる事になる。
1人1人の小さなチャレンジが、
少しずつうねりを生み出してマーケットを創造し、
そこに会社が乗っかって社会が変わる。
意味がないとバカにされるような事でも、
誰にも評価されないような失敗でも、
巡り巡ってきっと何かに良い影響を与えている。
社会はそうやってできていると思うのです。