理念

 

「お客様の喜びが一番」と言っていたはずの会社が、

お客様に喜ばれない商品まで数字のために売ろうとする。

 

「お客様を守りたい」と言っていたはずの会社が、

儲からないという理由だけで守るべきお客様を突き放す。

 

経営理念と矛盾する行為は、

多かれ少なかれ、どこの会社でも

当たり前のように行われている。

 

「経営理念の浸透」という言葉が叫ばれるのは、

裏を返せば、そう簡単にできないからこそ。

 

会社も生身の人間が動かしている以上、

お金や見栄や名声など、

人間らしい欲望に従って動いているのかもしれない。

 

私だって、

誰にも応援されず、資金繰りの苦しみにさらされ、

罵声怒声を浴びせられるような状況に陥ってしまったら、

経営理念なんて言っていられる自信がない。

 

最低限の安全・安心の欲求が満たされていなければ、

「経営理念」という概念は忘れられてしまう。

 

そして、認められたい、褒められたいという

人間らしい部分はやる気の源になる。

 

どれだけいい事をやっていても、

まわりに評価されず、「ありがとう」と

言ってもらえない事をやり続けるのは難しい。

 

経営理念に従った行動は

短期的な結果に表れにくく、評価もしにくい。

 

だから、多くの会社では、

経営理念に沿った行動以上に、

短期的な数字・結果を評価の対象にする。

 

苦しんでいる会社では、

人間性に問題があっても、

スキルがあって、数字を上げられる社員をありがたく思える。

 

利益が先か、理念が先か、

それは鶏と卵のようなものかもしれない。

 

安定的な利益を出せるような体制を作って、

経営理念に沿った行動にシフトさせられるようにするか。

 

短期的な結果はガマンして、

経営理念に沿った行動で数字を作るように努力するか。

 

どちらも「いい会社」を目指しているのは違わない。

 

いい会社に見えないような会社でも、

売上が安定して、安心できるような状況になれば、

自然と社員やお客様の事をもっと考えるようになる。

 

利益追求型の経営で失敗すれば、

経営理念について深く考えるようになるかもしれない。

 

今、人格的に素晴らしいと言われるような経営者も、

たいてい過去に大きな失敗を経験している。

 

社員も家族も同じ事。

 

「なんでわからないんだ!」と

自分の善悪を押し付けてイライラするのはもったいない。

 

それは過去の自分と同じだからこそ思う事。

 

すべてを受け入れる事で、もっと穏やかな気持ちになれる。

そう思います。