家に帰ったら家族がいて、

「おかえり〜」と出迎えてくれる。

 

ありのままの自分を受け入れてくれる友達と

ただ一緒にお酒を飲んで、

くだらない話で盛り上がる。

 

そんな何気ない毎日が幸せだと思えるのはきっと、

それが「当たり前ではない事」だとわかっているから。

 

 

当たり前の幸せは、

当たり前すぎてなかなか自分で認識できない。

 

「すべてに感謝の気持ちを持つ事が大事」

と言われても、

「すべて」がどこまでのものを指すかという事も、

「感謝の気持ち」がどこまでの深さなのかもわからない。

 

「明日死ぬかもよ」

と言われたくらいでは、

生きている事に対する感謝の気持ちは芽生えない。

 

どんなにわかりやすく説明されたって、

言葉だけではわからない・伝わらない事は意外に多い。

 

 

実際、天狗になっている時に、

ステキな戒めのアドバイスをもらっても

「そんな事くらいわかってるよ!」

となかなか受け入れられない。

 

また本当に苦しい渦中にある時に、

「失敗にも意味がある」

「そのうちいい事あるから」

みたいなアドバイスを受けても、

「あなたに何がわかる!」

と逆にムカつく事もある。

 

それでも後でやっぱりその通りだとわかって、

申し訳なくて恥ずかしくなった経験は、

きっと誰にもあるはず。

 

簡単で当たり前の事ほど、

わかっているようでわかっていなくて、

できていない事も多い。

 

 

「当たり前が当たり前ではない事」を認識するには、

当たり前を失う経験をするか、

経験した人によるリアルな話や深い空想で疑似体験をするしかない。

 

そう思うと、

マイナスに見える事は決して悪いことではなくて、

プラスの状態を認識するために必要な事。

 

例えば、「右腕がある」という喜びは、

「右腕を失った事のある人」によって浮き彫りになる。

 

日本に住めている事の素晴らしさがわかるには、

海外に出るか、日本が大好きな人&大嫌いな人の話を聞く事で

本当の理解ができるようになる。

 

塩味があるから甘みが引き立つのと同じように、

嫌な事があるから、好きな事が引き立つ。

 

 

人生はコントラストによって豊かになる。

 

貧乏旅をしていた時に食べた安い食事がものすごく美味しかったり、

人間不信に陥っていた時のちょっとした一言に涙が出るほど感動したり、

どうしようもない失敗談が今では笑い話になったりするのは、

きっとコントラストがあるが故。

 

組織でもそれは同じ事。

 

辞める社員がいるからこそ、

残ってくれる社員の価値がわかる。

 

決定に反対して不平不満を口にしてくれる人がいるからこそ、

自分の感覚が当たり前ではない事がわかるし、

決定に賛成して応援してくれる人に感謝ができるようになる。

 

そもそも全員賛成である方が怖い。

 

メンバー全員がイエスマンだったら、

組織はとても危なっかしい。

 

人として・組織としての生存戦略的にも、

最低2割くらいは反対意見があった方がいい。

 

自分と違う意見だからこそ、

それが新しい気付きになる。

 

 

結局すべての出来事は、

それがいい事なのか、悪い事なのか

すぐには認識できないように、

できているような気がする。

 

資本主義社会の中、

組織の規模や売上UPを目指す社長は多いけれど、

大きい組織には大きい組織なりの素晴らしさがあると同時に、

小さい組織にも小さい組織なりの素晴らしさがある。

 

多くの人が欲しがっているお金・時間も、

それを手に入れてしまうと、

お金・時間がなかったが故にあった、

お金・時間で得られる充実感が失われる事になる。

 

好んで経験したくはない大きな苦難も人生たまにはあるけれど、

それもその人を成長させる大きなチャンス。

 

争いがあるからこそ、平和の価値がわかる。

 

 

ムダに見える事も、歪に見える事も、

大きな視点で見れば、

実はすべてに意味があって、

調和しているのかもしれない。

 

 

そしてもし本当に平和な社会が訪れるとしたら、

それはきっと平和が当たり前になりすぎて、

それに関わる言葉が社会から消失する時。

 

「戦争反対!」と伝えようにも、

「戦争って何?ああ昔話であったアレの事?今時そんな事する人がいる訳ないじゃん!」

と世界中の人がまともに認識できないような状態が

本当に戦争がなくなる状態だと言えるような気がする。

 

そう思うと、きっと当たり前な事なんてない。

少なくとも、言葉で共有できるレベルの事は当たり前ではない事。

 

当たり前すぎる事の価値にできるだけ気が付いて、

今を充分に味わって楽しんでいきたいです。