「どんな事があっても社員を守るために・・・」
「会社を守る事が私の使命で・・・」
とカッコよく話す社長に違和感を感じるのは私だけだろうか。
本来、会社の目的は経営理念にあって、
社長も社員もその手段のためにいる。
社員を雇って、お客様に喜びを与える仕事をした結果、
社会に必要とされて利益に繋がり、会社・社員が守られる。
つまり会社・社員が守られるのは、ただの手段であって結果。
だから会社・社員を守る事が経営の目的なんて事は、本来あり得ない。
また、「社員を守る」という言葉にも違和感がある。
社員は会社が守られなければいけないような、弱い存在なのだろうか?
社員は本来、同じ目的を達成するための仲間であって同志。
関係は対等であって、守られるような存在ではないはず。
会社が社員を守らなければならないという事は、
その分だけお客様に負担をかけるという事。
理想を共有できないやる気のない社員を抱え込み、
必要以上に高い給与を支払って、
質の低い対応でお客様に迷惑をかける事が、
社員を守る事だと感違いしてしまっている人が意外に多い。
「社員のための経営を!」と言っているような成功者は、
たいてい理念が浸透し社員の意識も高く、
「お客様のための経営 」なんて当たり前にできていて、
当然、会社は黒字の状態の上でそれを言っている。
最低限の事もできていない経営者が
その言葉に惑わされて「社員>お客様」になってしまっては経営の本質を見失う。
社員のためにお客様を犠牲にしていては、
お客様からそっぽを向かれる事になる。
だからと言って、
お客様のために社員を犠牲にしていては、
社員が疲弊しお客様に迷惑をかける事になる。
経営は絶妙なバランスで成り立っている。
社長が「社員を守るために!」
と”身内びいき”の話ばかりするようになっていたら、
経営の目的を見失ってしまっているのかもしれない。
社長も人間なので、
何のために頑張っているのかわからなくなって、
「社員のために頑張るんだ!」と社長自身を鼓舞したり、
努力の割に感謝されない事が寂しくてアピールをしてしまったりする事もある。
でも本来、社長は会社を通じて、
社長自身の自己実現のために頑張っているはず。
その証拠に、会社が倒産して一番困るのは、すべてを失う社長。
認めたくはないかもしれないけれど、
社長が頑張っているのは、社員以上に自分のため。
社長が社員のためと勘違いして、
必要以上の給与や待遇を与える事が、
社員を甘えさせ、会社に依存させてしまう事に繋がってしまっている。
その証拠に、会社が倒産して社長の次に困るのは、
能力以上の給与・待遇の恩恵にあずかる管理職やベテラン社員。
優秀な社員や若手社員は、会社に何かあったとしても言うほど困らない。
もし社長が本当に社員を守りたいなら、社員を弱い者扱いせず、
何があっても困らない、どこでも通用する実力を身に付けさせる社員教育に力を入れるべき。
そしてそんな社員ばかりになれば会社は倒産などしない。
お客様に直接感謝される機会が多い現場と違って、
社長は基本、誰にも感謝されず、孤独で寂しい。
だからいつの間にか経営の目的を見失う。
「会社や社員を守るため」なんていう安易な目的に逃げないで、
社長自身のために、経営を楽しみ、やりたい事をやり切って欲しいと思う。