感情的に怒っている人の話は支離滅裂。

 

「黙って聞け!」

と言われて黙って聞いていても

「何黙ってるの!」

怒られる。

 

「何か言ってみたらどうだ!」

と言われて何か言っても火に油を注ぐ。

 

言われた通りの対応をすれば逆効果。

 

何に対してなぜ怒っているかも意味不明。

 

訳がわからなくて、

悩まされた経験のある人も多いはず。

 

 

「ハイかイエスで答える」

とはよく言ったもので、

結局相手がそう言って欲しい事を言う以外、

余計に話を長くさせるだけで、

逃れられないケースもあるかもしれない。

 

私も感情的に怒っている人が苦手だけれど、

怒っている人が

怒ってまで訴えたい本音はたいてい

「自分が正しい事をわかって欲しい」

もしくは

「自分が悪くない事を認めて欲しい」

のどちらかだとわかってだいぶ楽になった。

 

 

例えば、

「この職場が嫌だから会社を辞めます」

と部下に言われて上司が怒るとしたら、

怒る理由はきっと、

上司自身が作り上げてきた環境を否定され、

自分が悪いかのように感じたから。

 

上司が作り上げた今の環境に自信があれば

「この職場の良さがわからないなんて残念な人だな」

とか、ただ純粋に、

「一緒にやっていきたかったのに寂しいな」

とはなるけれど、

怒るまではいかない。

 

上司が、

「お前のためにどれだけしてやったと思っているんだ!」

「お前みたいに責任感のないヤツは他に行ってもうまくいかない!」

などと、感情的になって辞める部下を怒るのは、

上司も、辞める部下の言い分が図星だとわかっていて、

それを認めたくないから。

 

部下を責めて何がしたいかと言うと、

「自分は悪くない」

と納得させるために、

「相手が悪い」

と決め付けたくて怒っている。

 

怒った時に

「なんでできないんだ!」

「だから言っただろう!」

と言うのはその典型。

 

論理的に考えれば、

「部下が悪い=上司が悪くない」

とはならないけれど、

感情的になっている人にそんな事はわからない。

 

怒る人は感情的になっているからこそ怒る。

そんな感情的に怒っている人の言葉を

論理的に返そうとしてもドツボにハマるだけ。

 

何度失敗しても、

「黙っていないで何か言いなさい!」

みたいなトラップのようなやり取りに

引っかかってしまっている人は多いはず。

 

相手を無視する訳でもなく、

聞かれた事に素直に答えないという、

高度なコミュニケーションを要求されるのが

怒っている人への対処法なのかもしれない。

 

 

仕事帰りの居酒屋で、

会社の不満を言う人が多いのは、

社内で不満を言ったところで、

「部下が悪いのは上司の責任」

「それも含めて仕事だから」

などと正論を言われるのがわかっているから。

もしくは、不満を言う自分が格好悪いとわかっているから。

 

論理的にはわかっていても、

感情的にはどうしようもできないモヤモヤを

なんとかしたくてお酒を飲んで不満を言う。

 

その本音は、

「自分が正しい事をわかって欲しい」

「自分が悪くない事を認めて欲しい」

という事。

 

正論や解決策を言われると、

自分が正しくないような気がして、

もしくは自分が悪いような気がして、

余計にむなしくなる。

 

メンタルヘルスのために、

ただただ聞いて認めてくれる相手を求めて

夜の街を渡り歩く人もいる。

 

それと同じように

怒っている人に対して必要なのは、

感情に寄り添う事なんだと思う。

 

 

とはいえ今は、

若い人ほど怒られ慣れていない人が多く、

噛み合わない会話になりがち。

 

でもその中でも怒っている人は

自分を救うために都合の良い解釈を探す。

 

そして、

自分が悪くないと認識できると、

少しずつ落ち着いていく。

 

「コイツはダメなヤツなんだ(から俺は悪くない)」

「今時の若者は根性がない(から俺は悪くない)」

と思えればそれで納得する。

 

また、言い争いの中で、

「それなら仕方がない」

と共感できるものがあれば納得する。

 

「給与・休みが少ないから辞める」

言うとスムーズに進みがちなのは、

変えられない制度に対する不満だから。

 

自分ではなく、別の人の揉め事が原因だとわかったり、

会社の問題とは別で、家庭の事情もある事がわかったり、

また、新しいチャレンジをするためだとわかったり。

 

それで自分が責められていた訳ではないと理解すると、

いつの間にか怒りは消えて

「次の職場でも頑張れ!」

と根本的な問題解決はそっちのけのまま、

円満に進むこともある。

 

会社を辞める部下からしてみると、

「会社・上司の事は好きだけど辞める」

「会社・上司は悪くないけど辞める」

という事をわかってもらえるように

伝えるのが円満退社のコツ。

 

会社を辞める理由が

「結婚するから」

だと上司は

「そうなんだ」

と納得しがちなのは、

自分が否定されていると感じないから。

 

よく考えると、

「結婚する事=会社を辞める」

なんてならないのに、

それが理由として成立してしまうのは、

理屈ではなく感情的に

もっともらしさを感じる人が多いから。

 

辞める人に辞める理由なんて聞いても、

辞める事は変わらないのだから

聞く意味もないような気もしないでもないけれど、

人間は感情的に納得したい動物なのかもしれない。

 

 

会社を辞める時、

コミュニティから退会する時、

付き合っていた人と別れる時 etc、

人と人が揉めやすいのは、

続けていた何かを辞めると、

なぜか否定しているかのように

受け取られてしまうから。

 

だから、

辞める方は本当は早く動きたいのに

ズルズル続けてしまう傾向にある。

 

辞められる方は

「俺の何が悪いんだ!」

と弁解したくて、

会話にならない会話を続けようとする。

 

でも

「辞める=否定された」

とは限らなくて、

ただの勘違いである事も多い。

 

「飽きたから」

「親に言われたから」

「あの人に叱られたから」etc、

年配の人には考えられないような短絡的な理由で

会社を辞めようとする若手社員に振り回されて、

その度に傷ついていたら

心が持たないような気がする。

 

 

変化の激しい時代。

 

変化に適応するために、

続ける美徳が失われつつあるのは

ある意味当たり前。

 

「やりたい事をやったらいい」

という言葉が

フラフラとなんでも楽な方向へ

逃げる言い訳に使われるのは

なんだか寂しく思う時もあるけれど、

見方を変えれば短所は長所。

 

フラフラしているように見えるのは、

ある意味適応力があるという事。

 

何かに対して怒るのは、

怒るほど本気であるという事。

 

どんな失敗も、

自分を成長させるステキな経験。

 

辞める事も怒る事も悪くはないけれど、

もし人を怒らせたくないのであれば、

相手がこだわっている事を否定したように

とらえられないような言葉を選ぶ事。

 

怒っている人をスムーズに収めたいなら、

相手が正しい事・相手が悪くない事を

相手のプライドを傷つけないように認めてあげる事。

 

それで意図しない余計な争いはだいぶ避けられる。

 

 

 

昔は貧乏で不便だったが故に

承認欲求を満たしやすかった。

 

それが今では、

豊かで便利になったおかげで、

承認欲求が満たしにくくなった。

 

仕事ができなくて窓際族になっても、

きちんとした給与が支払われるというのは、

衣食住が満たされていなかった

昔の人にとっては考えられない事。

 

「えっ!?仕事しなくても給与もらえるの?マジで!」

と逆に喜ばれるかもしれない事。

 

それでも現代人は承認される事を求める。

 

組織・コミュニティにおいて、

怒っている相手にも、そうでない相手にも、

感情に寄り添う事の重要性は

より強くなってきているような気がする。